粘液嚢胞(ねんえきのうほう)および
がま腫の治療について
粘液嚢胞(ねんえきのうほう)とは
唾液の排出障害によってできる袋状の病気で、大小様々なものがありますが内容物は唾液です。唇にできることが多く、水ぶくれができ破れますが、しばらくすると同じものがまた出来ます。発生部位によって呼称が変わりますが、原因は同じです。
- 〈粘液嚢胞(口唇腺)〉
- 〈ブランディン・ヌーン嚢胞(前舌腺)〉
- 〈がま腫(舌下腺)〉
粘液嚢胞(ねんえきのうほう)の治療法
粘液嚢胞(ねんえきのうほう)には様々な治療法があります。
1.保険診療
従来からこの疾患では、原因である唾液腺を含めた嚢胞摘出術や開窓術などの外科的治療が行われています。現在でも、保険適応で行える治療は外科的治療です。
費用:約15,000円程度
2.OK-432注入療法(自由診療)
従来からこの疾患では、原因である唾液腺を含めた嚢胞摘出術や開窓術などの外科的治療が行われています。現在でも、保険適応で行える治療は外科的治療です。
しかしながら、顔面、口腔という審美的な部位であることなどから侵襲の少ない治療も望まれます。その治療法に、OK-432嚢胞内注入療法(保険適応外)があります。
費用:1回目:30,000円+TAX(2回目以降:15,000円)
OK-432(商品名:ピシバニール)日本で開発
A群溶血性連鎖球菌の弱毒の自然変異株(Su株)をペニシリンで処理した製剤。
重要な点は「溶血性連鎖球菌としての性質を残したまま増殖できないように処理した」ことです。
1975年に癌の免疫療法剤として認可された(中外製薬)、日本においては長い使用経験 が蓄積された薬剤です。
もとが細菌ですから、注射した場所に強い炎症を引き起こし、 種々のサイトカイン(免疫因子)を産生させることにより免疫増強作用をおこします。
この薬を癌性胸膜炎・腹膜炎(癌のために、胸や腹に水が貯まる状態)などの際に胸腔や腹腔内に投与すると、胸水や腹水の貯留に対して非常に有効であることです。また、OK-432を皮内に注射した場合、注射局所は強い炎症を起こしますが、瘢痕を残さずに治癒することも知られています。
初めてがま腫に応用されて以来、粘液嚢胞・がま腫・舌嚢胞(Blandin-Nuhn嚢胞)では極めて有用(有効率80以上)がま腫に対するOK-432嚢胞内注入療法のまとまった例数での英語の論文は、日本の2003年の論文(32例、有効率97%)だけでしたが、2006年に韓国から相次いで3編の論文(顎 下型ガマ腫21例、ガマ腫26例、小児のガマ腫13例)が出ました。いずれも、90%程度の 有効率であり、「ガマ腫に対するOK-432嚢胞内注入療法は外来通院で治療可能な安全で効果の高い治療法で、手術を考える前に試みるべき治療である」と いう内容です。
粘液嚢胞(ねんえきのうほう)の治療方法
0.5~1.0KEのOK-432を0.1~0.2ml程度の生理食塩水で希釈した薬剤を嚢胞腔内に注入のみ行います。注入には27Gの細い針を使用しますので、ほとんど痛みはありません。
粘液嚢胞(ねんえきのうほう)の副作用
・局所の疼痛、発熱(局所の炎症症状は嚢胞を消失させる源となる反応であり、反応が強いほうが治癒する可能性が高くなります)
・薬剤にペニシリンが含まれますので、ペニシリンアレルギーのある場合は使用できません。
・1回の注入で治癒するとは限らず、数回注入する必要があることがある。必ず治癒するという保証はありません。
・治療の翌日もしくは翌々日、2週目、4週目、6週目に必ず受診して下さい。
・効果不十分な場合は、6週目以降に追加治療を行います。